サイクロンを含む、いわゆる「3転以上」の技を練習する時に推奨されているのは、どのタイプのアプローチでその技を攻略するのかという方向性の選択である。

 サイクロンを攻略する方向性について考えると真っ先に思い浮かぶ方向性は、おそらく誰もが「速さと腕全体の重心移動による技の完了」だろう。しかし、これが実は好ましくない。
 そもそもサイクロン攻略について考えはじめるのは、サイクロン一歩手前の段階であるトルネードをそれなりの精度(大体95%程度)で実行出来るようになった頃のペンスピナーだろう。そのトルネードの最も簡単な攻略方が、先に挙げた「速さと腕全体の重心移動による技の完了」である以上は、同じ方向性でサイクロンも攻略してしまおうという発想にたどり着くのがごく自然なことなのだが、実はそれが既に好ましくない。本来ガンマン系の技に求められるはねるような回転が、実はサイクロンを簡単に攻略することに適していないのだ。はねるような回転でのトルネードは、「ノーマルからひとさし指につなぎ、ひとさし指を軸とした腕の重心移動」によって行われる。はねるような回転でのトルネードは、運動そのものが個として完結しすぎているため、そこから先への発展が非常に困難だ。確かにトルネードそのものは簡単に攻略出来る方法なのだが、実はそこから先への発展は、トルネードなどの2転レベルまでの技を攻略していた程度のペンスピナーに出来ることではないのである。
 それらを踏まえて本題に戻りたい。「速さと腕全体の重心移動による技の完了」についてだが、実はこれそのものは非常に困難というほどの難度ではない。「なめらかなトルネード」をそれなりの精度でこなせるペンスピナーならば、3~4日も練習すれば時折成功するようになるだろう。「なめらかなトルネード」とは、「指先でのペンに対するアプローチと、手首のわずかな重心の移動による技の完了」によって行われるトルネードのことである。「ノーマルという個」からひとさし指に繋ぐという考え方ではなく、ワンツーノーマルの流れを一つの個として捉えるのだ。はねるような回転でのトルネードと比較すると、確かに派手さは無くなってしまうが、見ている者にとってその回転の軌道や流れが細かく伝わるため、むしろ見た目は綺麗になる。「ノーマルという個」からひとさし指に繋ぐトルネードからサイクロンへ繋ぐ場合、トルネードからさらに親指に戻しての回転を行わなければならないため、「ノーマル」「ひとさし指を軸とした腕の重心移動での強引な1転」「親指を軸とした腕の重心移動での強引な1転」という三つの個によって一つの技を完了することになる。これに比べ、なめらかなトルネードから「速さと腕全体の重心移動による技の完了」という方向性でサイクロンへのアプローチへと繋ぐ場合は、「なめらかなトルネード」「親指を軸とした腕の重心移動での強引な1転」という二つの個によってサイクロンが完了するため、技の実行時における展開遷移によるペンスピナーへの膂力的負担が格段に減少するのだ。ただし、そもそもトルネードから親指へ繋ぐという考え方でも、やはりサイクロンはサイクロン。困難であることに変わりはない。サイクロンそのものが持つ難易度を変えることが出来ていないのである。直前までひとさし指で回していたペンを親指に繋いで1転させるには、そのひとさし指を素早く反らす必要があるのだが、直前まで回転の安定をはかっていた上に、何より1転において重要なのは軸となる指、今回の場合は親指であるため、ひとさし指に意識の大半をおくことが出来ないのである。よって、「速さと腕全体の重心移動による技の完了」という方向性を選択することは推奨されない。
 
 つづく


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